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非正規労働者も「厚生年金」に加入できる
日本の公的年金は2階建となっていて、1階部分の国民年金は全員が加入しますが、2階部分の厚生年金はサラリーマン(男女を問わず、公務員等を含む)が加入するものです。
しかし、非正規労働者でも一定の要件を満たすと、年金制度上はサラリーマンとみなされて厚生年金に加入することになります。要件は複雑ですが、大胆にいえば「大企業で週20時間以上働くか、中小企業で週30時間以上働くこと」です。
時給1,000円で週20時間働くと、年収が106万円程度になります。厚生年金保険料は勤務先と折半なので、自己負担は9%強ですみます。したがって、大企業で働けば、年間10万円程度の保険料を支払えばよいのです。中小企業で週30時間働いた場合でも、保険料は年間15万円程度ですみます。
もしも現在、国民年金保険料を支払っているなら、要件を満たすような働き方をして厚生年金に加入するほうが絶対に得です。支払う保険料が減り、老後に受け取れる年金が増えるのですから。
サラリーマンの専業主婦(主夫を含む、以下同様)については後述しますが、それ以外の非正規労働者が現在、国民年金保険料を払っていないのだとしたら、老後は年金が受け取れないか、大幅に減額されるでしょう。
あらたに厚生年金保険料を支払うのは短期的にはつらいかもしれませんが、それによって老後は(年金保険料の払い漏れがなければ)月額6万9,000円プラスアルファの年金が受け取れるのですから、払う価値は十分にあると思います。ちなみに1階部分の年金(老齢基礎年金と呼ばれます)は月額6万9,000円強で、それに厚生年金が上乗せされるわけです。
配偶者の片方が厚生年金に加入すると、片方の年金保険料が不要に
ここからは、非正規労働者の結婚のメリットについて話すことにします。「金のために結婚する」わけではありませんが、「金がないから結婚できない」と考える必要はありません、という話です。
結婚のメリットを考える前提としてぜひ理解していただきたいのが、公的年金の仕組みです。年金制度は国民を3つのグループに分けています。サラリーマン、サラリーマンの専業主婦、それ以外、です。サラリーマンは、上記のように厚生年金保険料を支払います。それによって国民年金保険料も支払ったことにしてもらえます。サラリーマンの専業主婦は、配偶者が厚生年金保険料を支払うことで、自分も国民年金保険料を払ったことにしてもらえます。それ以外の人は、各自が自分で国民年金保険料を支払う必要があります。
厚生年金に加入していない二人の男女が結婚を考えているとします。現在、2人とも国民年金保険料の支払い義務を負っています。1人年額20万円ほどなので、2人で40万円ほどです。払わないと将来年金が受け取れなかったり大幅に減額されたりします。
2人のうちの片方が厚生年金に加入する働き方に変更した上で2人が結婚すると、厚生年金に加入していない人は国民年金保険料の支払い義務を免れることができ、しかも老後は1階部分の年金が受け取れるのです。
独身の非正規労働者にとっても厚生年金への加入は得ですが、非正規労働者と非正規労働者が結婚した場合のメリットは非常に大きいといえるでしょう。年間10万円か15万円程度の保険料を支払うだけで、老後には夫婦2人で14万円プラスアルファの年金が毎月受け取れるのですから。
加えて、年齢差がある場合には、年齢が上の人が厚生年金に加入することによって、年齢が上の人が65歳になったときから配偶者に「加給年金」が支給されるかもしれません。
本稿を読んで「非正規労働者の自分は、金がないから結婚できないと諦めていたけれど、恋人に本稿を読んでもらって結婚について前向きに考えよう」と思ってくれた人がいるならば、お役に立てて光栄です。
もっとも、年金制度は複雑なので、数千円か1万円程度の相談料はかかりますが、ファイナンシャルプランナーや社会保険労務士などに話を聞いてみるとよいかもしれません。それによって一生の間に受け取れる金額が何百万円も増える可能性もありますから。
悩ましいのは、サラリーマンの専業主婦です。働く時間を調整すれば、年金保険料を払わなくていいのに、厚生年金に加入するような働き方をすると保険料の支払い義務が生じてしまうからです。
もっとも、筆者としては、厚生年金への加入をお薦めします。平均寿命まで生きれば元がとれる、という損得の話もありますが、重要なのは保険機能です。長生きしている間にインフレが来て老後資金が底を突いてしまうリスクに対し、公的年金は大変心強い味方となってくれますから。
加えて、障害状態になった場合や、配偶者と離婚や死別をした場合に備えての保険機能、配偶者が失業した場合に備えての保険機能も期待できます。配偶者が失業した場合、本来であれば2人とも国民年金保険料を払う必要が生じますが、自分が厚生年金に加入していれば、自分も配偶者も国民年金保険料を支払う必要がありませんから。
本稿は以上ですが、意思決定等々は自己責任でお願いします。なお、本稿はわかりやすさを重視しているため、細部が厳密でない場合があり得ます。
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塚崎 公義
経済評論家
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