I 第三者委員会、責任調査委員会等の調査委員会の役割・機能
執筆者:木目田 裕
第三者委員会をめぐる議論が盛んですが、本稿で論じるように、企業不祥事において、第三者委員会などの調査委員会がいかなる役割・機能を果たすものなのか、個別の事案における行為規範はいかに在るべきか等の観点からの議論が必要であるように思います。
なお、本稿では、「第三者委員会」について、「日本弁護士連合会の「企業等不祥事における第三者委員会ガイドライン」(2010年7月15日策定、2010年12月17日改訂)(以下「日弁連ガイドライン」といいます。)に準拠した第三者委員会」をいうと定義します。
1. 責任調査委員会の役割・機能と第三者委員会との相違
(1)まず、責任調査委員会・責任追及委員会(以下、一括して「責任調査委員会」といいます。)を取り上げます。
大きな企業不祥事があると、第三者委員会などの調査委員会が設置され、事実関係や原因解明、再発防止策の提言などが行われることが一般的です。
第三者委員会などによる調査結果を踏まえて、監査役(監査委員、監査等委員を含みます。以下同じ。)は、取締役(執行役を含みます。以下同じ。)の善管注意義務違反について、損害賠償請求等の責任追及(責任追及訴訟の提起・追行)をすべきかどうか、判断する必要があります。
その場合に、監査役が、外部の独立した弁護士に委嘱して、責任調査委員会を設置することがあります。責任調査委員会は、第三者委員会などの事実認定結果を前提として、取締役の善管注意義務違反の有無、取締役に対する責任追及訴訟の提起の要否・範囲等を検討して、監査役に調査結果を提言します。
監査役は、責任調査委員会の調査結果を踏まえて監査役会等で検討し、取締役に善管注意義務違反があり、会社に対する損害賠償をさせる必要があると判断するならば、監査役が会社を代表して、取締役に対する責任追及訴訟の提起を行い、裁判所の判断を求めて訴訟追行します。
(2)この責任追及訴訟では、責任調査委員会の委員を務めた弁護士の少なくとも一部が会社(つまり監査役)の訴訟代理人を務めることが一般的でした。例えば、オリンパスや東芝における会計不正事案、スルガ銀行における不正融資事案などにおいても、責任調査委員会の委員が、その後の責任追及訴訟において会社の訴訟代理人を務めています。
というのも、責任調査委員会の役割・機能は、弁護士が責任追及訴訟の提起の要否について監査役にアドバイスすること(法的助言)だからです※1。そのため、従前は、責任調査委員会の委員を務めた弁護士が、その後の責任追及訴訟の訴訟代理人を務めることに問題があるとの指摘はほとんどありませんでした。
※1 責任調査委員会は、第三者委員会等の事実認定結果を前提として、自らも必要に応じて追加的な事実調査を行い、「どの取締役に、どのような責任があって、どのような損害について、責任追及訴訟を提起すべきか」について、責任調査委員会としての見解を、監査役の責任追及判断のために、提供するものです。この一文の「責任調査委員会」という言葉を、例えば「監査役会の顧問弁護士」という言葉に置き換えてみてください。主語が「監査役会の顧問弁護士」であっても、何も不自然ではないでしょう。
一般の民事事件などで、弁護士が依頼者から相談を受け、依頼者に訴訟を提起すべきだとアドバイスして、依頼者を代理してその訴訟を追行することは、通常行われていることです。
責任調査委員会の委員として関与した弁護士であれば、証拠関係について自ら検討して知悉しているので、責任追及訴訟でわざわざ別の弁護士を起用して一から検討し直させるのは、時間的にも費用的にも非効率です。また、責任追及せよと提言した以上は、「言いっ放し」にするのではなく、責任追及訴訟も受任して、裁判所の判断を自ら仰ぐこととして、自分の提言に責任を果たすのが弁護士ではないか、という見方もできます。
こうした事情から、責任調査委員会の委員を務めた弁護士の少なくとも一部が、その後、責任調査委員会の提言を踏まえて提訴された責任追及訴訟において、会社(つまり監査役)の訴訟代理人を務めることが、従前は一般的でした。
(3)この場合に、「外部の独立した弁護士からなる責任調査委員会」という建付けがとられるのは、「監査役が取締役の責任追及を判断するにあたり、社長や取締役らに忖度して甘い判断をしているのではない」と、株主、報道機関等のステークホルダーに示すためです。
大きな企業不祥事になれば、大きく報道され、会社も、社長ら取締役らも、厳しく批判されます。そうした中で、監査役は取締役の責任追及の要否や範囲の判断を行うことになりますが、「取締役も監査役も同じ会社の中での昔からの同僚・仲間ではないか。社長や会長、あるいは他の取締役らに忖度して、不当に責任追及を怠っている。提訴範囲や請求すべき損害額も手心を加えて甘くしている。」等といったことで、監査役の責任追及判断が甘くなる恐れがあったり、株主等のステークホルダーから、そうした疑念を抱かれる恐れがあります。
だから、これまで会社(特に社長や取締役といった執行側)から仕事の依頼を受けたこともない「外部の独立した」弁護士から構成される「委員会」を作って、社長や取締役らに対して忖度することのない、厳正な判断をしてもらうわけです。「外部の独立した弁護士」や「委員会」という建付けの意味は、この点にあります。
責任調査委員会の役割・機能は、以上のとおり責任追及に関する監査役への法的助言なので、責任調査委員会を設置する旨の適時開示やプレスリリースをする場合には、会社は責任調査委員会のことを「第三者委員会である」とは表現しないのが一般的です。
そのため、従前は、責任調査委員会を第三者委員会と同視する法律実務家や企業の方はあまりいなかったように思います。だからこそ、責任調査委員会の委員を務めた弁護士が、その後の責任追及訴訟で会社(監査役)側の訴訟代理人を務めることが一般的だったのであり、この点を問題として指摘する声もほとんどなかったように思います。
2. 「責任調査委員会=第三者委員会」論
(1)ところが、大阪高裁令和3年12月22日決定(判例時報2538号22頁)は、責任調査委員会のことを第三者委員会と同一視して捉え、責任調査委員会の委員であった弁護士が責任追及訴訟で訴訟代理をすることを禁じました。
この大阪高裁決定は、会社のプレスリリース等における「外部」「独立」等の言葉を捉えて、責任調査委員会を第三者委員会ないし裁判官の役割であると混同している点等で誤りであり、最高裁で取り消されています。
最高裁令和4年6月27日決定(集民268号323頁)は、第三者委員会か否か等といった形式論に陥ることなく、責任調査委員会の役割・機能を具体的に検討して、委員であった弁護士による責任追及訴訟における訴訟追行を適法なものとして認めています。
フェアネスのため、申し上げておきますが、筆者は本件で訴訟行為の排除を申し立てられた弁護士の1人です。この大阪高裁決定の問題点は他にも種々ありますが、本稿は、個別事案を論じるものではないので、この点は他日を期すことにします。
(2)この大阪高裁決定の前後から、一部の弁護士が書いた論説などでは、責任調査委員会について第三者委員会と同様であると性格付けした上で、第三者委員会性を根拠に、責任調査委員会の委員である弁護士を責任追及訴訟の訴訟行為から排除すべきであるとする議論(以下「第三者委員会『論』」といいます。)が特に見られるようになりました。
つまり、①責任調査委員会は第三者委員会である、②第三者委員会の委員は、当該案件において、調査業務以外に関わってはならない、③だから、責任調査委員会の委員は責任追及訴訟に関与してはならない、という論説です。
既に述べたとおり、最高裁が大阪高裁決定を取り消しているのですが、こうした第三者委員会「論」も、「責任調査委員会=第三者委員会」とする具体的な根拠を提示しているものは、見当たりません。
むしろ、こうした論説では、第三者委員会の独立性・中立性を強調していながら、第三者委員会と責任調査委員会の異同を論じることなく、責任調査委員会の役割・機能が監査役への責任追及の法的助言であることにも言及せず、そのため責任調査委員会=第三者委員会の雰囲気を維持することで、責任調査委員会の委員たる弁護士に訴訟追行させるべきでないとの結論に論旨を飛躍させているものもあります※2。
※2 日弁連ガイドライン脚注1は「第三者委員会は関係者の法的責任追及を直接の目的にする委員会ではない。関係者の法的責任追及を目的とする委員会とは別組織とすべき場合が多いであろう。」と述べていますが、第三者委員会「論」では、この点についての検討もなされていないように思います。
しかし、こうした議論は、企業に過剰な弁護士起用を強いるだけでなく、第三者委員会実務を思考停止に陥らせるという問題点があります。
(3)まず、過剰な弁護士起用の点です。
最高裁が大阪高裁決定を取り消した後も、第三者委員会「論」が一部にあることで、企業不祥事に直面した企業は、責任追及訴訟において、事案の解決にとって本質的でない争点を作ることを避けるための安全策として、責任調査委員会の委員を訴訟代理人には起用しないようになっています。
そのため、企業は、第三者委員会にも関与していない、責任調査委員会にも関与していない、別の新たな弁護士を探してこなければいけません。そして、その新たな弁護士が、ゼロから証拠を読み始め、関係者にヒアリングも行って法的検討も行い、訴訟を追行するわけです。いろいろな弁護士から何回も同じようなヒアリングを受ける関係者の負担も大変ですが、新たな弁護士が責任調査委員会の検討作業とほぼ同じことを重複して繰り返すことで余分な弁護士費用も生じます。
会社は、危機管理対応の弁護士を起用して法的問題や対応等について法的助言をしてもらいながら、第三者委員会の弁護士を起用し、更に責任調査委員会の弁護士を起用した上で、加えて責任追及訴訟のための弁護士も起用することになるわけで、ここまで来ると弁護士起用が過剰ではないでしょうか※3。更に加えて、会社はフォレンジック業者も起用し、更に危機管理広報のコンサル業者なども起用するわけです。
※3 なお、弁護士の過剰起用を避けるために、第三者委員会に、事実認定等だけでなく、取締役らの善管注意義務違反の有無や責任追及訴訟を提訴すべきかどうか等も判断させることも、一応は考えられます。つまり、責任調査委員会は一切作らない、ということです。
ただ、日弁連ガイドラインが、その脚注1で、第三者委員会について「関係者の法的責任追及を目的とする委員会とは別組織とすべき場合が多い」と述べているのは、十分な理由があることでして、関係者が自己の法的責任追及を恐れて第三者委員会の調査に協力しなくなると、第三者委員会の本来の設定目的を達成することができなくなるという問題があります。
また、会社は、既に第三者委員会と責任調査委員会とで、これまで会社と関係がなかった弁護士を探して起用している上に、監査役としては、これらの弁護士とは別に、責任追及訴訟の訴訟代理人として、更に重ねて、「独立した弁護士」※4を探してきて選任する必要があります。第三者委員会の事実認定や責任調査委員会の責任追及判断を骨抜きにしてしまう(と、ステークホルダーから疑われる)ような弁護士を選任するわけにもいきません。
※4 ここで「独立した弁護士」とは、被告とされた元取締役らに忖度などせず、厳正に訴訟追行することを期待できる弁護士をいいます。
(4)次に、こちらがより本質的な点ですが、第三者委員会「論」は、思考停止に陥り、第三者委員会実務上も、弁護士倫理上も、あまり有益な議論を生み出さないように思います。
第三者委員会「論」は、第三者委員会という概念を絶対視して、それに該当する限り、第三者委員会の委員である以上は、当該案件において調査業務以外に関わってはならない、とするものです。
しかし、第三者委員会だけでなく、それ以外の調査委員会(外部有識者からなる調査委員会、社内調査委員会、責任調査委員会等があります。)も含めて、こうした調査委員会の具体的な役割・機能に照らして、調査委員会の委員を務めた弁護士が「行ってよいこと」もあれば、「行ってはならないこと」もあると思います。「第三者委員会ならば、委員は調査以外は一切ダメ」という議論も、「第三者委員会でないならば、委員は何の制約もない」という議論も、どちらも適切でないと思います。
責任調査委員会が、その役割・機能が取締役の責任追及のための監査役への法的助言であるにもかかわらず、例えば、責任追及の対象になる可能性のある取締役やその他の会社の役職員らに対して、「責任調査委員会は、あなた方の責任追及を目的とするものではないから、ヒアリングで何を供述しても大丈夫だ」等と虚言を弄したり、その旨誤解させるようなことはしてはならないはずです※5。同様に、責任調査委員会が、こっそりと取締役や役職員らと裏取引をするようなことも許されないはずです。
※5 この点、上記最高裁令和4年6月27日決定は、的確に物事の本質を捉えており、同決定が指摘する、会社による同委員会設置時の公表内容、同委員会が取締役に送付した事情聴取への協力を要請する文書の記載内容等は、責任調査委員会における具体的な行為規範として参考になると思いますが、本稿の主題ではないので、詳細は判決文をご覧ください。
https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/275/091275_hanrei.pdf
こうしたことは、責任調査委員会が、第三者委員会と同じか違うかとは、関係ありません。これらは、責任調査委員会の委員が「行ってはならないこと」であり、第三者委員会の委員であっても同じく「行ってはならないこと」です。
(5)本来論ずるべきなのは、責任調査委員会の委員である弁護士が責任追及訴訟の訴訟代理人を務めることに、いかなる弊害ないし問題点があるかです。
責任調査委員会の役割・機能は、弁護士が責任追及訴訟の提起の要否について監査役にアドバイスすること(法的助言)なので、責任調査委員会の委員を務めた弁護士が、その後の責任追及訴訟の訴訟代理人を務めることは自然なことであり、問題は、それにもかかわらず、訴訟代理を許さないとすべき事情が何かあるかどうか、です。
責任追及の対象になり得る取締役に対して、虚言を弄したり、誤解させてならないことは上記のとおりであり、会社が責任調査委員会の役割・機能につき「取締役の責任追及の要否等を検討して監査役に提言する」旨である等と適時開示やプレスリリースを行ったり、責任調査委員会が調査対象となる取締役にその旨を説明する限り、こうした誤解等の問題はありません。
上記最高裁令和4年6月27日決定が述べるとおり、会社や責任調査委員会が取締役の責任追及のための調査委員会である旨を明確に説明している限り、「調査委員会」という形態・名称であるからといって、責任追及の対象となる取締役が自己に有利なように信頼や期待を主張しても、委員の訴訟代理人就任が許されなくなるわけではありません。
また、一部の弁護士の間には、「責任調査委員会の委員が、責任追及訴訟の訴訟代理人になるとすると、訴訟代理人としての報酬欲しさに、委員会の調査結果を取りまとめる際に、本来は責任追及すべきでない取締役についても殊更に責任追及を提言する方向にインセンティブが働く」という意見があるようです。
私は、弁護士の矜恃や倫理感・責任感から、弁護士が報酬欲しさに仕事を歪めるなどとは思っていませんが、仮に「弁護士には、報酬欲しさのために、訴える必要もない相手を訴えるように依頼者に勧めるインセンティブが働く」というのが、残念ながら弁護士の傾向として存在するというのであれば、確かに、責任調査委員会の委員である弁護士には、責任追及訴訟の訴訟代理人への就任を禁じるという考え方が成り立つと思います。
他方、責任調査委員会の役割・機能に照らし、忖度やなれ合いで社長ら取締役の責任追及に手心が加えられるよりは、委員に責任追及する方向のインセンティブが働く方が、社会公共の観点からは望ましい旨、あるいは、責任調査委員会の中の非公開プロセスで取締役に「責任なし」と処理されるよりは、裁判手続という外部に公開されたプロセスで(憲法82条1項参照)取締役の責任の有無が明確化される方がよい旨など、「報酬欲しさインセンティブ」構造があると仮定しても、利益衡量として、責任調査委員会の委員の訴訟代理人就任を認めることの公益的な必要性の方が勝るという考え方もあります※6。
※6 類似の議論として、刑事裁判の文脈では、検察官が絶対に有罪の確信がない限り起訴しないから刑事手続の機能に歪みが生じているとして、検察官は有罪の確信がない場合でも起訴して、公開の法廷での判断に委ねるべきであるという議論があります。
また、企業や企業経営者らが特に強く非難されている企業不祥事では、責任調査委員会の委員に訴訟代理人を務めさせる方が、責任調査委員会が自分たちのレピュテーションや忖度批判を気にして、不十分な証拠関係でも「責任追及せよ」と言いっ放しにすることを防止できるという考え方もあるところです。
繰り返しですが、私は上記のような「報酬欲しさインセンティブ」が弁護士に働くとは思っていませんので、責任調査委員会の委員である弁護士が責任追及訴訟の訴訟代理人に就任することに何の問題もないと考えていますが、仮に、この「報酬欲しさインセンティブ」を問題にするのであれば、責任追及委員会が第三者委員会かどうかなどという問題設定よりは、上記で示したように、こうしたインセンティブ構造それ自体を直接問題にする方が社会的に見て意味のある検討を行うことができると思います。
(6)「報酬欲しさインセンティブ」を問題にして、責任調査委員会の委員が責任追及訴訟について訴訟代理人に就任してはならないとの立場に立つと仮定するならば、「委員が監査役に対し、訴訟代理人にならずに、訴訟手続の外で、責任追及訴訟の訴訟追行について助言することも禁止するべきである」という行為規範が導き出されることにもなります。
なぜなら、委員が訴訟代理人に就任しないで監査役に訴訟追行について助言を続けることについても、「報酬欲しさインセンティブ」が働くと考えなければ、物の考え方として首尾一貫しないことになるからです。
同様に、調査委員会を離れて、通常の民事事件一般についても、弁護士が依頼者に訴訟の提起をアドバイスして、それに従って依頼者が訴訟を提訴する場合についても、弁護士が訴訟代理による報酬欲しさに依頼者に対して必要もない訴訟の提起を勧めることになるとして、弁護士倫理上、その弁護士が訴訟代理人を務めることも禁止する必要があるということになります。
もし、弁護士に「報酬欲しさインセンティブ」があるとしてそれを問題視すると本当に考えるのであれば、調査委員会などという狭い世界だけでなく、民事事件一般という、もっと社会や公共に影響を与える、より広い範囲で、弁護士倫理の改善向上を検討する必要性があることとなります。
このように、第三者委員会や責任調査委員会、社内委員会などの調査委員会について、その役割・機能に照らして具体的に検討する方が、具体的な行為規範の導出や弁護士倫理の改善向上の観点から意味のある検討を行うことができると思います。
3. 第三者委員会の委員が会社による再発防止策の実施について関与・助言できるか
第三者委員会「論」の問題点について、ここで、責任調査委員会を離れて、第三者委員会それ自体を例にして検討します。
第三者委員会の委員である弁護士や有識者※7が、調査報告書を会社に提出して、第三者委員会業務を終了した後に、会社に対して、再発防止策の実施について関与・助言することは、果たして禁止されるべきなのでしょうか?
※7 第三者委員会の場合には、法的助言それ自体を主目的とする責任調査委員会と異なり、弁護士資格を有しない者も弁護士とともに委員を務めることが一般的です。
第三者委員会「論」のように「第三者委員会の委員は、当該案件において、調査業務以外に関わってはならない」との見解に立てば、これは禁止され、弁護士であれば弁護士倫理違反とされるのでしょう。
しかし、責任調査委員会について述べたのと同様に、これでは思考停止に陥ります。第三者委員会の役割・機能や弊害という観点から物事を考察するべきです。
第三者委員会の役割・機能は、企業不祥事の場合、一般に、事実関係や原因の解明、再発防止策の提言等となります。会社が、提言された再発防止策を着実に実行するように、第三者委員会の委員が、第三者委員会業務終了後、会社に再発防止策の実施に関して相談に乗ったり、助言したからといって、第三者委員会の調査結果やこれに対する信頼を歪めることにはならないと思います。むしろ、第三者委員会の委員としては、調査報告書を会社に提出して「言いっ放し」にするのではなく、責任感をもって会社の再発防止策の実行の手助けをするわけですから、推奨こそされて然るべきではないか、と思います。
他方、前述した「報酬欲しさインセンティブ」からすると、第三者委員会の委員が、第三者委員会業務終了後に、再発防止策実行との関係で会社から報酬を得ることを期待して、例えば、第三者委員会としての調査結果に手心を加えて、会社や経営陣に厳しい調査結果とならないようにする等といったインセンティブが働くから、事後の再発防止策実行への関与は禁止するべきであるという考え方が生じることになります。
前述したように、私は、弁護士が報酬欲しさに仕事を歪めるなどとは思っておりませんが、「報酬欲しさインセンティブ」があると仮定しても、他方において、第三者委員会の委員が会社の再発防止策の実行に関与し続けることは、株主その他のステークホルダーに対する責任という観点から、積極的な価値の方が大きいという考え方もあります。
4. 最後に
(1)日弁連ガイドラインの前文で「本ガイドラインは第三者委員会があまねく遵守すべき規範を定めたものではなく、あくまでも現時点のベスト・プラクティスを取りまとめたものである」と述べているとおり、第三者委員会という建付は、運用上の工夫であり、具体的な運用の在り方は、幅広く、柔軟なものであるはずです。
それに反して、第三者委員会であれば委員は調査以外は一切関与禁止などという硬直的な対応をとって、「第三者委員会は調査をして報告書を出せば、それで全ておしまい」というのでは、第三者委員会は、会社による再発防止策の実施やコンプライアンス改善、社会問題の解決などで、調査報告書の執筆と提出以外には何も貢献できないことになります。
もちろん、第三者委員会の役割・機能を調査それ自体に純化すればするほど、第三者委員会を会社ないし経営者の不当な影響から隔離し易くなることもまた事実だとは思います。その意味で、第三者委員会の役割・機能の在り方については、いくつかの方向性があり得ますが、第三者委員会「論」では、議論や検討が「第三者委員会なのか、そうでないか」というレベルを超えて、それより深く進むことがないように思います※8・※9。
※8 「第三者委員会なのか、そうでないのか」という形式や名前での思考停止は、批判回避のための「名ばかり第三者委員会」や「お手盛り第三者委員会」の跋扈と裏腹の関係にもなります。
※9 なお、本稿の主題と離れますが、私は、第三者委員会実務について、調査対象となる企業や企業役職員の手続保障を図ることが重要であると考えています(木目田裕=上島正道「企業等不祥事における第三者委員会-日本弁護士連合会「企業等不祥事における第三者委員会ガイドライン」を踏まえて-」旬刊商事法務1918号(2010年)18頁以下参照)。
(2)より広く、第三者委員会に限らず、調査委員会実務一般に当てはまることですが、責任調査委員会であれ、その他の何らかの委員会であれ、委員会という形態・名称や第三者委員会かどうかという性格決定で思考停止するのではなく、その役割・機能に照らして具体的な行為規範を問題としない限り、今後の実務の健全な発展はないように思います。
この点、「企業不祥事があって、第三者委員会が設置されて調査中、会社経営陣が自分たちへの責任の波及を恐れて、調査を妨害し、結局、第三者委員会の委員が調査途中で辞任をせざるを得なくなった」という事例を考えてみましょう※10。
※10 この点、日弁連ガイドライン「第3.企業等の協力についての指針」「2.協力が得られない場合の対応」は「企業等による十分な協力を得られない場合や調査に対する妨害行為があった場合には、第三者委員会は、その状況を調査報告書に記載することができる」としています。
この場合、第三者委員会の委員たる弁護士としては、ただ黙って辞任するだけでなく、もし問題が消費者の生命身体等に危険をもたらすものである場合や、反社会性が強いものである場合などは、もちろん具体的な事実関係次第ですが、問題を公に公表することや、企業の法令違反等について関係当局に通報することなどが、社会・公共の見地から、具体的な行為規範として求められることもあり得るのではないか、と思います。
あるいは、ここまで大風呂敷を広げた議論でなくとも、第三者委員会の調査結果に不満がある元取締役らが、第三者委員会やその委員を攻撃することもあり、具体的な事案次第ですが、弁護士に対する業務妨害として捉えるべき問題もあり得ると思います。
こうした行為規範や問題点を論じるに際しては、第三者委員会だけでなく、外部有識者からなる調査委員会や責任調査委員会などについても、同じ問題があり得る以上、第三者委員会かそうでないかという議論の建て方は、ここでも有益でないと思われます。
以上
Ⅱ シンガポールの贈収賄規制・執行状況と企業への影響について
執筆者:井浪 敏史、チン・スーシャン
1. はじめに
シンガポールは世界の中でも腐敗の少ない国として知られ、各国の腐敗度合いを示す代表的指標でありTransparency Internationalが毎年公表しているCorruption Perceptions Index(腐敗認識指数)の2024年版でも、腐敗の少ない国第3位に位置付けられています。
もっとも、贈収賄が重大なコンプライアンスリスクとして位置付けられ、当該リスクへの手当てが必要であることはシンガポールでも同様であり、当局の執行状況につきシンガポール特有の部分もあると考えられます。
以下では、シンガポールにおける贈収賄規制と当局による執行状況の特徴、考えられる企業への影響の概要についてご紹介します。
2. シンガポールにおける贈収賄規制
シンガポールにおいて主に贈収賄を規制する主な法令は、Prevention of Corruption Act 1960(PCA)であり、PCA5条は、主体が公務員であるか民間人であるかを問わず、賄賂を受け取る行為及び提供する行為の処罰を定めています。
禁止される贈収賄行為の主な要素は以下のとおりであり、他の主要国における贈収賄規制と共通しています。
その他、PCAでは以下のような規制が設けられています。
▶PCA6条:(本人に影響を与える目的での)代理人との間で行われる贈収賄の処罰
→違反の場合には、10万ドル以下の罰金または/及び5年以下の禁固
▶PCA11条:国会のメンバーとの間で行われる贈収賄の処罰
→違反の場合には、10万ドル以下の罰金または/及び7年以下の禁固
▶PCA12条:(投票行為や職務遂行に影響を及ぼす目的での)公的機関のメンバーとの間で行われる贈収賄の禁止。
→違反の場合には、10万ドル以下の罰金または/及び7年以下の禁固
※「公的機関」とは、公衆衛生、事業、公益事業に関連する法律に基づいて、またその目的のために行動する権限を有する企業や組織、または、法律に基づき徴収・調達された資金を管理する権限を有する企業や組織をいう。
また、刑法(Penal Code 1871)161条から164条においても、公務員との間で行われる贈収賄の処罰が定められています。
加えて、関連する法令として、Corruption, Drug Trafficking and Other Serious Crimes(Confiscation of Benefits)Act 1992は、贈収賄を含む犯罪収益の押収や犯罪収益のロンダリング行為の処罰を定めています。
シンガポールでは、反贈収賄に特化した首相府直轄の組織としてCorrupt Practices Investigation Bureau(CPIB)が設置されており、警察による刑法犯の調査に加えて、CPIBによるPCA違反行為の調査が行われています。
3. シンガポール当局による執行状況の特徴、考えられる企業への影響
シンガポール当局による執行状況の特徴として、公務員との間での贈収賄に対する調査数が少なく、民間での贈収賄(いわゆる商業贈賄)に対する調査数が多いという点が挙げられます。
CPIBによる2024年4月30日付けリリース”Constant Vigilance Vital To The Fight Against Corruption”によれば、2023年にCPIBが調査対象とした81件のうち、商業贈賄の事案が70件(86%)を占めるとされており、商業贈賄規制を有する他の国においても、公務員との間での贈収賄の調査に重点が置かれることが多い状況とは対照的と思われます。
例えば、企業等の従業員が行為者となった近時の商業贈賄の事例には以下のようなものがあります。
Intertek従業員の関与事例(2022年4月14日CPIBリリース)
〇 国際的な認証機関であるIntertek Testing Services(Intertek)等の測量士である従業員の立場にあった者12名が、オイル会社であるShell Eastern Petroleum(Shell)がIntertek等を供給用の容器におけるオイル量を測定するための測量会社として起用していたことに関し、オイルの不正入手に協力する見返りとして、Shellの社員から計21万3000ドル以上の賄賂を受け取った収賄行為が処罰された事例(一部の者に対しては、複数の違反による加重として29年間の禁固が科されている)。
シンガポール航空従業員の関与事例(2022年11月8日CPIBリリース)
〇 シンガポール航空の従業員が(他の個人と共謀して)、同社が実施する入札手続に関して、入札参加業者を補助し秘密情報を提供する見返りとして、入札参加業者の従業員から計47万4500ドルもの賄賂を受け取った収賄行為が処罰された事例。
前者の事案のように、会社の従業員が自社からの横領行為に協力した関連業者に一定の謝礼を支払う行為は、シンガポール以外の国も含め、不正類型として珍しくないと思われますが、そのような謝礼の受領行為が収賄罪として補足されている点は注目に値すると思われます。
また、上記事案では、処罰対象とされているのは従業員個人のみですが、贈収賄行為を行った従業員が会社の具現化(embodiment)に当たる場合、ないし当該行為が従業員に適切に授権された管理権限の範囲内であるような場合(within the scope of the function of management properly delegated)には、会社自体も犯罪主体として責任を負い得ると考えられています(Tom Reck Security Pte Ltd v Public Prosecutor [2001] 2 SLR 70)。
また、上記のような事案で自社の従業員が調査や処罰の対象となること自体が、会社のレピュテーションへの大きな悪影響につながり、また事案への対応負担等を含め、他の従業員にも悪影響を及ぼし得るものと考えられます。
4. 終わりに
シンガポールの贈収賄規制に関して、主に執行対象となっている商業贈賄の事例では、会社の従業員が自社の事業に関連する業者から賄賂を受領した行為が処罰されているものも少なくなく、そのような不正が行われるリスクはどの会社でもあり得るものと考えられます。
従業員の贈収賄への関与により会社への悪影響が生じる事態を避けるためには、想定されるリスクを念頭に置いて、そのようなリスクを軽減・防止するためのコンプライアンス体制の整備が重要と考えられます。
以上
Ⅲ 最近の危機管理・コンプライアンスに係るトピックについて
執筆者:木目田 裕、宮本 聡、西田 朝輝、澤井 雅登、寺西 美由輝
危機管理又はコンプライアンスの観点から、重要と思われるトピックを以下のとおり取りまとめましたので、ご参照ください。
なお、個別の案件につきましては、当事務所が関与しているものもありますため、一切掲載を控えさせていただいております。
【2025年3月31日】
一般社団法人全国銀行協会、「不正利用口座の情報共有に向けた検討会」報告書を公表
https://www.zenginkyo.or.jp/news/2025/n033101/
一般社団法人全国銀行協会は、2025年3月31日、「不正利用口座の情報共有に向けた検討会」報告書を公表しました。本検討会は、各金融機関における金融犯罪の検知能力の強化に向けて、金融機関間で、不正利用口座の情報を共有する枠組みの構築について検討するため、2024年12月に設置されたものです。
本報告書においては、個別の金融機関が把握できる情報は限定的であり、犯罪者の口座や詐欺被害が疑われる送金を検知することには限界がある現状において、金融機関が、検知・凍結した犯罪者の口座情報を金融機関全体へ即時に共有することによって、各金融機関が、自社において①被害者の口座、②犯罪者の口座、③共犯者の口座を検知しやすくなると指摘されています。
今後は、関係当局との協議や少数の銀行における試行結果を踏まえ、不正利用口座の情報を共有するシステムの設計・開発に着手するとのことです。
【2025年3月31日】
金融庁、「マネロン等対策の有効性検証に関する対話のための論点・プラクティスの整理」及び「マネロン等対策の有効性検証に関する事例集」を公表
https://www.fsa.go.jp/news/r6/ginkou/20250331-3/20250331-3.html
2025年3月31日、金融庁は、「マネロン等対策の有効性検証に関する対話のための論点・プラクティスの整理」及び「マネロン等対策の有効性検証に関する事例集」を公表しました。前者は、金融機関等における有効性検証※11の実施の考え方、有効性検証に係る金融庁と金融機関等との対話の進め方等を示すものであり、後者は、金融機関等の有効性検証の取組事例を紹介するものです。
※11 金融機関等が、変化するマネロン等リスクに対して管理態勢の維持・高度化を目的として、「自社が、直面するマネロン等リスクの特定・評価・低減を適切に実施していること」を確認する取組み。
【2025年4月2日】
カリフォルニア州司法長官、連邦レベルでのFCPAの一時執行停止に関係なく、同州法上は、外国政府関係者への贈賄は引き続き違法である旨注意喚起
トランプ政権は、2025年2月10日、少なくとも180日間はFCPA(海外腐敗行為防止法。外国公務員等に対して賄賂を供与する行為等を禁止する米国の連邦法です。)の執行を一時停止することなどを米司法長官に指示する大統領令を発令しました※12。
※12 概要については、本ニューズレター2025年2月28日号(「第2次トランプ政権による米国海外腐敗行為防止法(FCPA)の執行方針の転換?~ボンディ・メモとFCPA執行を一時的に停止する大統領令について~」)をご参照ください。
カリフォルニア州司法長官は、2025年4月2日、この大統領令にかかわらず、カリフォルニア州においては、ビジネスを獲得や維持するために外国公務員に対して支払うことは違法であり、FCPAに違反する行為は、依然として、UCL(カリフォルニア州の不正競争防止法)違反として訴追される可能性があるとの注意喚起を発表しました。
本大統領令は、FCPAを廃止するものではなく、あくまでその執行を一時的に停止するものであり、本注意喚起は当然のことを述べたものとも言えます。企業においては、引き続き、国内外の贈賄防止に関するコンプライアンス上の取組を継続していく必要があると考えられます。
【2025年4月7日】
消費者庁、「いわゆる『ダークパターン』に関する取引の実態調査」を公表
https://www.caa.go.jp/policies/future/icprc/research_010
2025年4月7日、消費者庁は、「いわゆる『ダークパターン』※13に関する取引の実態調査」を公表しました。本調査は、国内の消費者が閲覧し商品・サービスに係る取引をすることができるウェブサイトに関し、消費生活相談情報から、消費者とのトラブルが存在すると考えられるもの及び売上高の状況から、国内の消費者による利用実績が多いと考えられるものを対象とし、事例の収集・分析を行ったものです。本調査の主な内容は以下のとおりです。
※13 ダークパターンという概念について、本調査は、「必ずしも統一的な概念ないし意義として把握されているわけではないが、①消費者の誤解を招いたり誘導することを通じて意図しないことをさせるか、消費者の自主的な意思決定や選択を損なうことによって、②消費者の最善の利益に反するとともに事業者の利益になる意思決定をさせる、といった要素が見られる」ことを指摘しております。
▶ダークパターンの各分類のうち、「事前選択」※14に該当するものが最も多く、次いで順に「偽りの階層表示」※15、「お客様の声」※16、「強制登録」※17に該当するものが多く見られた。
※14 事業者の望む選択肢がデフォルトで事前選択されているもの。
※15 事業者が望む選択肢等が目立つようになっているもの。
※16 商品等を購入した他の消費者の評価や口コミに関する表示であって、誤解を招いたり、虚偽の可能性があるもの。
※17 消費者が、会員登録(アカウントの作成を含む)を強制されるか、登録が必要だと思い込まされてしまうもの。
▶事例を全体として捉えると、「偽りの階層表示」と他の分類といった複数の分類の組合せが多く見られた。
▶独自性がある特徴的なものとして、「未成年者の法定代理人同意確認」※18などが見られたほか、「みなし同意」※19については、我が国の現行法上、直ちに違法又は不当とまではいえないとしても、消費者の利益の擁護の観点からは検討の余地があると思われる。
※18 未成年者は契約の締結に関して法定代理人の同意を得ている旨の確認チェックボックスがある、又は規約にその旨のみなし同意の記載があるもの。
※19 商品等の購入やウェブサイトの利用、必要事項の記入により、プライバシーポリシーや利用規約等に同意したものとみなす記載があるもの。
▶ウェブサイト上の表示ないしデザインで強調されている事項については、商品・サービスの内容や取引条件ではない事項であっても、消費者の意思決定の際に重要な影響を及ぼしている可能性があることがうかがえた。
【2025年4月10日】
金融庁、暗号資産についてのインサイダー規制、税率引下げなどを目指す
https://www.yomiuri.co.jp/economy/20250410-OYT1T50011/
2025年4月10日付け読売新聞オンラインによれば、金融庁は、2026年に金融商品取引法の改正案を国会に提出し、ビットコインなどの暗号資産について、金融商品と位置付けてインサイダー取引規制の対象とすることや、暗号資産の取引で得た利益に係る税率を引き下げる(現状の雑所得としての税率(最大55%)から株式等と同等の20%に引き下げる)ことなどを目指すとのことです。
【2025年4月11日】
金融庁、「金融商品取引法第二条に規定する定義に関する内閣府令」等の改正(案)の公表と意見募集開始
https://www.fsa.go.jp/news/r6/shouken/20250411/20250411.html
2025年4月11日、金融庁は、「金融商品取引法第二条に規定する定義に関する内閣府令」等の改正(案)を公表し、意見募集を開始しました。改正の概要は以下のとおりです。
・「金融商品取引法第二条に規定する定義に関する内閣府令」の改正案
発行会社及びその子会社の役員又は従業員が構成員となる持株会に基づく権利は集団投資スキームに関する規制の適用除外とされているが、この適用除外の対象となる持株会の構成員に発行会社の関連会社※20の役員又は従業員も含まれるよう改正を行う。
※20 「関連会社」とは、会社が他の会社等の財務及び事業の方針の決定に対して重要な影響を与えることができる場合における当該他の会社等(子会社を除く)を指します(会社計算規則2条3項21号)。
また、発行会社の関係会社※21の役員又は従業員が構成員となる拡大持株会に基づく権利は集団投資スキーム持分に関する規制の適用除外とされているが、この適用除外の対象となる拡大持株会の構成員に発行会社の子会社の役員又は従業員が含まれることを明確にする改正を行う。
※21 「関係会社」とは、①関連会社、②会社に対する前事業年度における他の会社の売上高が当該他の会社の売上高の総額の50%以上である場合における当該他の会社、③会社からの前事業年度における他の会社の仕入高が当該他の会社の仕入高の総額の50%以上である場合における当該他の会社を指します(現行の本内閣府令7条2項)。
・「有価証券の取引等の規制に関する内閣府令」の改正案
子会社株式の現物配当で割り当てられた株式の数量の範囲内で行う空売りについては、会社分割等の組織再編と同様、空売り規制(借入れ有価証券の裏付けの確認等)の適用が除外されることなどを改正するものです。
・「上場株式の議決権の代理行使の勧誘に関する内閣府令」の改正案
株主総会参考書類及び議決権行使書面に記載された事項等について、電子提供措置がとられている場合には、委任状参考書類に記載することを要しないことなどを明確化するものです。
【2025年4月22日】
犯罪対策閣僚会議、「国民を詐欺から守るための総合対策2.0」を公表
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/hanzai/kettei/250422/honbun-1.pdf
政府は、2025年4月22日、犯罪対策閣僚会議において、2024年6月にまとめたSNS詐欺対策を改定しました。本改定は、いわゆる「闇バイト」による強盗事件、SNS型の投資詐欺やロマンス詐欺、携帯電話への国際電話番号からの架電による詐欺、IDやパスワードを不正に入手するフィッシング被害の増加等を踏まえたものであり、以下のような新たな対策を講じるものとしています。
▶データ通信専用SIMの契約時における本人確認の義務化を検討
▶通信履歴の保存強化へ向けてガイドラインを改正し、保存の義務化を検討
▶秘匿性が高い通信アプリの内容を把握するため、新たな技術手法や法制度の導入を検討
▶不正利用口座について、速やかな情報共有や口座凍結を実施する新たな枠組みを創設
▶口座の悪用を防止するため、警察による架空名義口座の導入を検討
▶インターネットバンキングの利用限度額で適切な設定を注意喚起
以上