富裕層にも、富裕層を目指す人にも読んでほしい
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質問は「暮らし向き(半年後)」「物価上昇(1年後)」の2問のみ
内閣府は『消費動向調査』とは別に、2016年9月から『消費者マインドアンケート調査』(試行)という新しい調査を実施している。『消費動向調査』など通常の調査では、調査対象に選ばれないと回答する権利はないが、『消費者マインドアンケート調査』は国民の誰でもが自由に参加できる画期的な調査である。
スマートフォンやパソコンから1分間もかからずに短時間で簡単に回答できる。毎月20日締め切りで、結果の公表時期が当該月の22日~25日頃と早く、消費者マインドの基調変化を的確に把握できる。
質問は「暮らし向き(半年後)」と「物価上昇(1年後)」の2問だけだ。「暮らし向き」の質問は、「良くなる」「やや良くなる」「変わらない」「やや悪くなる」「悪くなる」の5つの選択肢から回答する。『景気ウォッチャー調査』的な見通し判断DIを簡単に算出することができる。全員が「変わらない」と答えると景気判断の分岐点の50になる。
現状は、高い物価見通しが暮らし向き判断の足枷に
暮らし向き判断DIと物価上昇判断DIの相関係数は2016年9月から2021年8月までの最初の5年間は0.01と無相関だった。しかし、2021年9月から2025年4月までの最近の3年8カ間は▲0.68と逆相関になっている。現状は、高い物価見通しが暮らし向き判断の足枷になっている状況だ。
暮らし向き判断DI、最低はコロナ禍の「20年4月」
暮らし向き判断DIの16年9月から25年4月の全調査期間平均は36.6、標準偏差7.0だ。最高は17年1月48.9、最低はコロナ禍の20年4月20.7である。暮らし向き判断DIは、24年10月から25年4月の7カ月間は、物価上昇判断DIが84以上の高水準に上昇したことから、低水準の20台・30台になった。
24年9月の41.0を直近の極大点として、振幅を伴いつつももたついた動きになっている。25年4月は25.4で3月の26.5から低下した。25年4月の暮らし向き判断DIは平均36.6から標準偏差7.0を引いた29.6を下回り、23年11月の22.5以来の、過去5番目に低い数字になった。
物価上昇判断DI、ロシアのウクライナ侵攻以降、物価上昇見通しに
物価上昇判断DIは、16年9月から25年4月の全調査期間平均は77.2、標準偏差8.4、最高は23年6月90.7、最低は21年2月の60.0だ。調査開始から22年1月までは60台・70台で安定推移していたが、ロシアがウクライナ侵攻した月の22年2月調査以降、物価上昇判断DIは80台・90台で、物価が上昇するという見通しが強まった。
22年10月に90.4をつけたあと80台後半の高水準での推移が続き、23年は6月の90.7をつけた。そこから振幅をともないつつ24年9月の80.3まで一旦低下したが、反転上昇傾向になり、25年2月に90.2と20カ月ぶりの90台を記録した。3月の物価上昇判断DIは86.8と2月からは鈍化し、4月は87.9に上昇し、平均+標準偏差の85.6を上回る高水準だ。
宅森 昭吉
景気探検家・エコノミスト
景気循環学会 副会長 ほか