約40年にわたり国内外の景気分析をしてきたエコノミスト・宅森昭吉氏が、景気や市場を先読みするヒントを紹介する本連載。今回は、日銀の政策金利変更のジンクスについて解説します。

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かつて日銀の臨時政策委員会の開催日は、多くの人の関心事

金融政策に関する法則の一つに「仏滅に日銀は公定歩合の上げ下げをしない」がある。公定歩合とは、日本銀行が民間の金融機関に資金を貸し出すときに適用される基準金利。公定歩合を変動させることは日本の市中金利を変動させることと等しく、日本銀行は公定歩合を操作することで金融政策を行うことができた。そのため公定歩合は、長く日本の政策金利の役目を果たしていた。

 

昔は、ある日突然、臨時に政策委員会を開き、公定歩合を操作すると決定し、昭和の時代は翌日から、平成になってからは即日実施した。市場金利が自由化される前、日銀はこの方法で金融政策を行っていた。

 

その上げ下げは政策金利の指標として、長短の市場金利、外国為替相場、また日経平均株価の変動に多大な影響を及ぼしていた。企業が設備資金を借り入れる際の金利、家計にとっての預金金利や住宅ローン金利も公定歩合に連動していた。

 

日銀がいつ臨時政策委員会を開くかは、金融関係者や企業経営者のみならず、多くの人の関心事だった。報道機関も「いつ、何%か」を前もって報道することを競い合った。

金融政策決定会合での公定歩合変更日、暦の「六曜」と照合すると?

臨時政策委員会での公定歩合変更日と過去の事例を暦の六曜に照らし合わせると、仏滅に変更した例が一度もなかった事実が判明した。この法則は政策金利が公定歩合から無担保コール翌日物金利の誘導目標に変更となった後も通用したが、2007年2月21日の仏滅に引き上げたのが、唯一の例外になっている。

 

日本銀行は、1998年4月施行となった新日本銀行法に対応し、政策委員会のうち金融政策決定会合の定例化、およびその議事要旨等の公開などについて決定し、1998年1月より実施した。

 

その中で金融政策決定会合開催日の公表も行われるようになり、それまでのように、金融政策決定会合開催日を日銀総裁のスケジュールなどから探る必要もなくなった。

2007年2月21日、やはり「六曜的によくなかった」のか…

1994年10月に、民間銀行の金利は完全に自由化され、公定歩合を利用して民間銀行の金利を操作することはできなくなった。市中銀行の金利自由化後は、公定歩合を操作する代わりに市中銀行が資金の運用と調達を行う金融市場の金利である無担保コール翌日物金利を操作することで金融政策を行うようになった。

 

なお、2007年2月21日仏滅の引き上げは、六曜的に1日中が凶とされる最も縁起の悪い日に実施されたことがよくなかったのか、追加の政策金利引き上げは長い間できず、2024年3月19日の大安になって17年ぶりにやっと引き上げることができた。

 

 *(5/6)の23乗=1.5%だったが、24回目は仏滅 ※2025年の決定会合2日目は8回中、仏滅は9月19日の1回のみ。 (出所)日本銀行等
[図表]発表・即日実施となってからの、公定歩合、無担保コール翌日物金利誘導目標、変更決定日 *(5/6)の23乗=1.5%だったが、24回目は仏滅
※2025年の決定会合2日目は8回中、仏滅は9月19日の1回のみ。
(出所)日本銀行等

 

 

 

宅森 昭吉
景気探検家・エコノミスト
景気循環学会 副会長 ほか

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