50代を過ぎ、職場での立場や役割の変化に戸惑うビジネスパーソンは少なくありません。しかし、そんななかでも、社内で存在感を発揮し、生き生きと仕事を楽しむ人たちがいます。彼らは一体、なにが違うのでしょうか? 本記事では、保坂隆氏の著書『精神科医が教える 50代からの心おだやかな暮らし方』(有隣堂)より、50代の生き方・働き方について解説します。
現実を突きつけられて愕然としました…50代で花形部署から閑職へ。自己紹介時、ポケットからどうしても出せなかった「名刺」 (※写真はイメージです/PIXTA)

50代で「生き生きと仕事をしている人」の共通点

閑職に飛ばされる、役職定年など、シニア・ビジネスパーソンにはさまざまな壁が立ちはだかります。しかし、そんな壁をものともせず、社内で存在感を発揮し続けている人も大勢います。

 

ある企業の人事部長の話によると、50代を過ぎても孤立せず、生き生きと仕事をしている人には次のような共通点があるといいます。

 

コミュニケーション能力のある人

意外なようですが、専門知識やスキルがいくら高くても、コミュニケーション能力が低いと、本領を発揮しづらいものです。それは歳を重ねれば重ねるほどはっきりします。自分よりもはるかに年下の社員とデスクを並べて、同じ課題に取り組むことも多いからです。

 

そんなとき、過去の立場にこだわらない人間関係をつくれなければ仕事になりません。年下の社員に素直に教えを乞える度量も必要です。周囲のメンバーと良好な人間関係、もっと言えば信頼関係を築けるかどうかは、シニア・ビジネスパーソンの今後に大きな影響を与えるでしょう。

 

コーディネート力がある人

歳を重ねるほど斬新なアイデアを思いついたりすることは難しくなります。日々テクノロジーが進化するなか、新たな情報を吸収し続ける力も、弱くなりがちなのは致し方ありません。

 

そんななか、むしろシニア・ビジネスパーソンに求められるのは、これまでの経験を活かした応用力です。たとえば状況に応じて既存の技術や戦略のなかからいいとこ取りをして組み合わせる、といったことです。

 

長い経験からいろいろなことを知っている。物事を多面的に見ることができる。このような人材の需要は少なくないはずです。若い人材のかけ橋になり、チームワークをうまく取り持って仕事をスムーズに、効率よく進めていく。長年仕事をしてきたベテランには、そうした能力も期待されているのです。

 

気力のある人

ベテランだからと言って、過去の知識や技術にあぐらをかいているだけでは困ります。どの領域でも仕事のスキルやトレンドは日々更新されている時代なのに、そうした動きを積極的にフォローしようとする姿勢が見られない人もいます。

 

定年後の再雇用を考えている場合、こういった姿勢は要注意です。再雇用は2年とか3年とか期限付きで、雇用する側、雇われる側、両方の意志で契約をさらに延長するという形が多いのですが、こんな態度では「定年したらサヨナラ」で終わってしまうことになりかねません。できるだけ長く働きたいと思っているのなら、新しいことにも前向きに取り組んでいくべきでしょう。

 

仕事に感謝できる人

それまで管理職だった人に多いのですが、「これだけ実績のある自分が、こんなところで働いてやっているのだ!」というような態度が透けて見えるのは問題です。そもそも「仕事があること、働く場があること」に心から感謝することは、歳を重ねた大人であれば必須というより、当たり前のことでしょう。

 

実際、「感謝の気持ち」が行動や振る舞いから滲んでいる人は、それだけで周囲の信頼を得ることができます。それが歳を重ねたことによる「徳性」であり、最大の武器になるのです。

 

名刺なしに自己紹介ができる人

若いころは初対面の人に挨拶することなど何の抵抗もなかったのに、歳を重ねるにつれ、新しい人と知り合うのが面倒になる人は多いようです。

 

損保会社で30年以上働いているある50代の人の話です。最前線の部署から別の部署に異動になり、仕事はラクながら、今の自分を人に誇ることができなくなってしまいました。それならば、いっそのこと定年後を見越して何か趣味の集まりにでも参加しようと思ったものの、その際に自己紹介をするのがなんとも億劫で、最初の一歩が踏み出せずにいました。

 

「会社の肩書を言いにくくなって初めて気づいたのですが、これといった趣味や特技がない私は、名前を言ったらほかに話すことがないんです。その現実を突きつけられて愕然としました」ということでした。

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